ポリオの発生状況(11月7日更新)

令和4年11月7日
ポリオ

ポリオ発生国に渡航する際は,追加の予防接種をご検討ください

●10月12日、世界保健機関(WHO)は、国際保健規則(IHR)に基づく、ポリオウイルスの国際的な拡散に関する第33回の緊急委員会を開催しました。
●11月1日付の同委員会声明によれば、この会議において、ポリオウイルスの国際的な広がりについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」の延長勧告をしています。
●ポリオ発生国(アフガニスタン、マラウイ、モザンビーク、パキスタン、マダガスカル、コンゴ民主共和国、イスラエル、アルジェリア、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コートジボワール、ジブチ、エジプト、エリトリア、エチオピア、ガンビア、ガーナ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、ソマリア、トーゴ、ウガンダ、ウクライナ、英国、米国、イエメン、中国、コンゴ共和国、ギニア、ギニアビサウ、イラン、リベリア、ケニア、マリ、シエラレオネ、スーダン、南スーダン、タジキスタン)に渡航する人は、追加の予防接種を検討してください。

1 第33回緊急委員会
 10月12日、世界保健機関(WHO)は、国際保健規則(IHR)に基づく第33回緊急委員会を開催し、11月1日付の同委員会声明によれば、現在発出されている公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)の勧告をさらに3ヶ月延長することを決定しました。委員会はポリオに対する長期にわたるPHEIC発出に関する懸念を認識していますが、マラウイとモザンビークへのウイルス侵入及び感染拡大に代表されるように、依然として重大なリスクがあると結論づけています。

2 ポリオの発生状況
世界保健機関(WHO)は、2014年5月5日、ポリオウイルスの国際的な広がりが、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC、Public Health Emergency of International Concern)」であることを宣言していますが、上記1の第33回会合において、現在の状況が引き続きPHEICに該当するとの見解を示すとともに、発生状況を以下のとおり評価しています。

(1)評価
○「ポリオウイルス(野生型(WPV1)、ワクチン1型(cVDPV1)又は3型由来(cVDPV3))の感染があり、国際的に感染を拡大させるリスクがある国」
・野生型:アフガニスタン(最新の検出:2022年8月29日)
     マラウイ(最新の検出:2021年11月19)
     モザンビーク(最新の検出:2022年8月10日)
パキスタン(最新の検出:2022年9月15日)
・ワクチン1型:マダガスカル(最新の検出:2022年5月9日)
        モザンビーク(最新の検出:2022年8月5日)
        マラウイ(最新の検出:2022年8月15日)
        コンゴ民主共和国(最新の検出:2022年8月16日)
・ワクチン3型:イスラエル(最新の検出:2022年3月24日)

○「局所的感染の証拠の有無に関わらず、ワクチン由来ポリオ(cVDPV2)に感染した状態にある国」
・アルジェリア(最新の検出 2022年8月21日)
・ベナン(最新の検出 2022年8月17日)
・ブルキナファソ(最新の検出 2021年12月28日)
・カメルーン(最新の検出 2021年10月29日)
・中央アフリカ(最新の検出 2022年8月12日)
・チャド(最新の検出 2022年6月22日)
・コートジボワール(最新の検出 2022年7月18日)
コンゴ民主共和国(最新の検出 2022年8月20日)
・ジブチ(最新の検出 2022年5月22日)
・エジプト(最新の検出 2022年8月29日)
・エリトリア(最新の検出 2022年3月2日)
・エチオピア(最新の検出 2021年9月16日)
・ガンビア(最新の検出2021年9月9日)
・ガーナ(最新の検出 2022年9月6日)
・イスラエル(最新の検出 2022年6月16日)
・モーリタニア(最新の検出2021年12月15日)
・モザンビーク(最新の検出 2022年3月26日)
・ニジェール(最新の検出 2022年8月13日)
・ナイジェリア (最新の検出 2022年8月13日)
・セネガル(最新の検出 2021年11月18日)
・ソマリア(最新の検出 2022年7月21日)
・トーゴ(最新の検出 2022年3月22日)
・ウガンダ (最新の検出 2021年11月2日)
・ウクライナ(最新の検出2021年12月24日)
・英国(最新の検出 2022年5月31日)
・米国(最新の検出 2022年6月20日)
・イエメン(最新の検出 2022年8月16日)

○「もはやポリオウイルス(野生型(WPV1)又はワクチン由来(cVDPV))の感染はないが、野生型又はワクチン由来の再感染に対して影響を受けやすい国」
・野生型:なし
・ワクチン型:
中国(最新の検出 2021年1月25日)
コンゴ共和国(最新の検出 2021年6月1日)
ギニア(最新の検出 2021年8月11日)
ギニアビサウ(最新の検出 2021年7月26日)
イラン(最新の検出 2021年2月20日)
リベリア(最新の検出 2021年5月28日)
ケニア(最新の検出 2021年1月13日)
マリ(最新の検出 2020年12月23日)
シエラレオネ(最新の検出 2021年6月1日)
スーダン(最新の検出 2020年12月18日)
南スーダン(最新の検出 2021年4月18日)
タジキスタン(最新の検出 2021年8月13日)

(WHO発表(英文))
https://www.who.int/news/item/01-11-2022-statement-of-the-thirty-third-polio-ihr-emergency-committee

(2)パキスタン政府は、WHOの緊急勧告に伴い、同国に4週間以上滞在する外国人を含めた全ての人にポリオ予防接種を義務化しており、WHOが推奨する国際予防接種証明書にて摂取の記録を確認しています。

(3)以上を踏まえ、ポリオ発生国(アフガニスタン、マラウイ、モザンビーク、パキスタン、マダガスカル、コンゴ民主共和国、イスラエル、アルジェリア、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コートジボワール、ジブチ、エジプト、エリトリア、エチオピア、ガンビア、ガーナ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、ソマリア、トーゴ、ウガンダ、ウクライナ、英国、米国、イエメン、中国、コンゴ共和国、ギニア、ギニアビサウ、イラン、リベリア、ケニア、マリ、シエラレオネ、スーダン、南スーダン、タジキスタン)への渡航を予定している方及び現地に滞在している方は、以下3を参考にポリオの予防接種を検討してください。特に、現在ポリオウイルス感染者の発生が報告されている地域に渡航する場合は、以前に予防接種を受けていても、追加接種をご検討ください。現地の小児定期予防接種一覧、医療機関情報等については、渡航・滞在先の在外公館のホームページをご参照ください。
(参考)
厚生労働省ホームページ:ポリオ(急性灰白髄炎)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/
厚生労働省検疫所FORTHホームページ:海外渡航のためのワクチン
https://www.forth.go.jp/useful/vaccination.html

3 ポリオについて
(1)感染源
ポリオ(急性灰白髄炎)は、感染者(特に小児)の糞便又は咽頭分泌液との直接接触等によってポリオウイルスが人の口の中に入り、腸の中で増えることで感染します。増えたポリオウイルスが再び便の中に排泄されて、この便を介してさらに他の人に感染します。まれに汚染された水や食物などからも感染します。成人が感染することもありますが、主に小児で起こります。
(2)症状
潜伏期間は3~21日(通常は7~21日)、感染しても90%~95%は無症状(不顕性感染)です。4~8%は軽症であり、発熱、風邪のような症状や胃腸症状(咽頭痛、咳、発汗、下痢、便秘、悪心など)が見られます。また、感染者の1~2%は、頭痛、嘔気、嘔吐、頸部及び背部硬直などの髄膜刺激症状を呈します。感染者の0.1~2%が典型的な麻痺型ポリオとなり、1~2日の風邪のような症状の後、解熱に前後して急性の筋肉、特に下肢の麻痺(急性弛緩性麻痺)が起きることが多いです。発症から12か月過ぎても麻痺又は筋力低下が残る症例では、永続的に後遺症が残る可能性があります。
(3)治療
麻痺の進行を止めるための治療や、麻痺を回復させるための治療が試みられてきましたが、現在、特効薬などの確実な治療法はありません。麻痺に対しては、残された機能を最大限に活用するためのリハビリテーションが行われます。
(4)予防
ア 予防接種
日本の定期の予防接種では、平成24年8月までは経口生ワクチンが使用されていましたが、平成24年9月以降は注射の不活化ポリオワクチンが使用されています。ポリオが発生している国に渡航する人は、追加の予防接種を検討してください。
なお、生ポリオワクチンを接種した場合、ワクチンウイルスが体外に排泄されるため、極めてまれではありますが、接種後便中に排泄されるワクチンウイルスから免疫のない子供や大人に感染し、麻痺をおこすこともありますので、接種後の衛生管理にも注意してください。ただし、日本国内で主に用いられている不活化ポリオワクチン接種(注射によるもの)では、基本的にこのようなことが起こることはないとされています。
イ 感染予防
ポリオの流行地では以下のような感染予防対策を心がけ、感染が疑われる場合には、直ちに医師の診察を受けてください。
●こまめに石けんと水で手洗いし、特に飲食の前、トイレの後は念入りに手洗いを励行する。
●野菜や果物は安全な水で洗い、食物は十分加熱してから食べる。
●乳製品は殺菌処理されたもののみ飲食する。
●飲料水や調理用の水はミネラルウォーターを使用する。水道水を利用する場合は、一度十分に沸騰させた後使用する。安全な水から作ったと確認できる氷以外は使用しない。
(5)予防接種証明書
ア 国内での予防接種証明書
国内での予防接種証明書の取得については、予防接種を実施した医療機関にご相談ください。
イ 海外での予防接種証明書
海外での同証明書の取得については、渡航先の日本国大使館にご照会ください。
 
 詳細については、リンクページ等をご参照願います。