小川大使からの新年のご挨拶
令和7年1月6日
明けましておめでとうございます。年の初めに当たり、昨年1年を振り返りつつ、ご挨拶させて頂きます。
2023年12月に当地に着任してちょうど1年が経ちました。当初、私自身初めてのコンゴ及びアフリカ大陸勤務のため、ある種の気負いと身構えを以て赴任致しました。折しも大統領選挙・総選挙が実施され、政治情勢やそれに伴う治安動向に関心が集まっていた時期でもありました。幸いチセケディ大統領の再選と第二期政権発足、スミヌワ新内閣の発足が大過なく進み、様々な経済・社会上の課題はあれ、首都キンシャサは安定と活気を保っています。数十年来の日本の友人、ムココ副首相・国家経済大臣が政治の中枢に復帰されたことも喜ばしいニュースでした。同副首相は筑波大学経済学博士であり、今も流暢な日本語の使い手でおられます。残念ながら、武装勢力との戦闘で20数年来痛ましい被害の続く東部の人道情勢の改善は進まず、国内避難民の数は増大すらしているものの、ルアンダ・プロセスと呼ばれる政治対話・仲介の努力は継続しており、南キブ州からの国連軍(MONUSCO「国連コンゴ民主共和国安定化ミッション」)の撤退も大きな混乱なく実施されました。
こうした中、新年劈頭に改めて痛感致しますのは、特に日本国内に向けて適切な情報を発信し、当国についての理解を深めて頂くことの重要性です。残念ながら近年、コンゴは紛争や犯罪が随所に蔓延し、熱帯感染症が猖獗を極めるアフリカの中でも特に危険な地というステレオタイプのイメージを一般に持たれており、事件や問題に焦点を当てることが多いメディアの特性及び任務も相俟って、それが固定化しているように感じられます。しかしながらコンゴは日本の6倍の面積、東西及び南北ともに2,000kmある広大な国です。2,000kmとはちょうど、パリとウクライナの首都キーウ、あるいは東京と北京の距離に当たります。ロシアがウクライナに侵略戦争をしている最中だからといって、パリ、あるいはより近いベルリンやローマ、ギリシャ等を訪問することを躊躇するでしょうか。東部の紛争地、あるいは、エムポックス(旧称サル痘)や「謎の感染症」等と一時報じられていた病気(栄養・保健衛生状態の優れない奥地での乳幼児を中心とするマラリアによる犠牲とほぼ判明)の流行地と、首都キンシャサや南部の鉱業・経済都市ルブンバシとの位置関係も同様のものです。
こうしたことを強調するのは、実態にそぐわない漠然とした懸念で萎縮していては、人的交流に裏付けられる二国間の友好関係増進もさることながら、日本自身にとっての将来の利益と発展の機会を喪失しかねないとの心配があるからです。周知のとおり当国には現代産業に不可欠な銅、コバルト等を始め、戦略的に重要な鉱物のほぼ全てが多量に賦存し、豊富な降水と可耕地、森林といった天然資源に恵まれています。また、若者世代を中心として現在約1億人(メガロポリス・キンシャサだけでも1,700万人と言われます)の人口は、2050年には2億数千万、2100年には4億数千万となり、インド、中国、ナイジェリアに次ぐ世界第四の人口大国、すなわち潜在的巨大市場となる見通しです。現状ではインフラ整備が全く追いついていないといった課題はありますが、我が国の質の高いインフラと技術は、大河コンゴ川の中下流両岸を繋ぐ唯一のマタディ橋、キンシャサ市内のポワ・ルーと呼ばれるバイパス道路あるいは街を走る車の9割以上が日本車であること等により、一般市民を含む多くの人によく知られ、高い期待を寄せられています。この点、上述のムココ副首相からも、かつて日本はコンゴでの官民ジョイントベンチャーのパイオニアであり、今も日本製品は街中に溢れているが、日本企業については勇気のあるスタートアップ以外の姿がまだ見えない、官民とも今こそ始動し、支援(贈与)関係に留まらない経済及びビジネス間の協力を加速させるべき時だとのメッセージを頂いています。
もちろん、正しく恐れ、基本的な注意を払うことは必要です。例えばキンシャサ市内であれば、車体を黄色に塗装した一般の乗合バスやタクシーは利用せず、信頼のおけるハイヤーや配車サービスを使い、徒歩での移動は避けること、マラリア対策として必ずしも予防薬の内服までは必要ではありませんが、特に朝夕は蚊除けのスプレー等を用いつつ肌の露出を減らすこと等です。ビジネス環境の改善についてはコンゴ(民)政府も高いプライオリティを置き鋭意取り組んでいますが、個別の問題はまだまだ存在します。何か疑問や障害があれば、大使館としてはコンゴ(民)政府とも連携しつつ、必要な情報提供や側面支援を可能な限り行っていく所存です。
大使館業務への平素のご理解とご協力に感謝申し上げ、本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
最後に改めて皆様のご健康とご多幸、日本とコンゴ民主共和国の平和と友好・協力関係の発展を祈念して、新年のご挨拶とさせて頂きます。
駐コンゴ民主共和国大使 小川秀俊
2023年12月に当地に着任してちょうど1年が経ちました。当初、私自身初めてのコンゴ及びアフリカ大陸勤務のため、ある種の気負いと身構えを以て赴任致しました。折しも大統領選挙・総選挙が実施され、政治情勢やそれに伴う治安動向に関心が集まっていた時期でもありました。幸いチセケディ大統領の再選と第二期政権発足、スミヌワ新内閣の発足が大過なく進み、様々な経済・社会上の課題はあれ、首都キンシャサは安定と活気を保っています。数十年来の日本の友人、ムココ副首相・国家経済大臣が政治の中枢に復帰されたことも喜ばしいニュースでした。同副首相は筑波大学経済学博士であり、今も流暢な日本語の使い手でおられます。残念ながら、武装勢力との戦闘で20数年来痛ましい被害の続く東部の人道情勢の改善は進まず、国内避難民の数は増大すらしているものの、ルアンダ・プロセスと呼ばれる政治対話・仲介の努力は継続しており、南キブ州からの国連軍(MONUSCO「国連コンゴ民主共和国安定化ミッション」)の撤退も大きな混乱なく実施されました。
こうした中、新年劈頭に改めて痛感致しますのは、特に日本国内に向けて適切な情報を発信し、当国についての理解を深めて頂くことの重要性です。残念ながら近年、コンゴは紛争や犯罪が随所に蔓延し、熱帯感染症が猖獗を極めるアフリカの中でも特に危険な地というステレオタイプのイメージを一般に持たれており、事件や問題に焦点を当てることが多いメディアの特性及び任務も相俟って、それが固定化しているように感じられます。しかしながらコンゴは日本の6倍の面積、東西及び南北ともに2,000kmある広大な国です。2,000kmとはちょうど、パリとウクライナの首都キーウ、あるいは東京と北京の距離に当たります。ロシアがウクライナに侵略戦争をしている最中だからといって、パリ、あるいはより近いベルリンやローマ、ギリシャ等を訪問することを躊躇するでしょうか。東部の紛争地、あるいは、エムポックス(旧称サル痘)や「謎の感染症」等と一時報じられていた病気(栄養・保健衛生状態の優れない奥地での乳幼児を中心とするマラリアによる犠牲とほぼ判明)の流行地と、首都キンシャサや南部の鉱業・経済都市ルブンバシとの位置関係も同様のものです。
こうしたことを強調するのは、実態にそぐわない漠然とした懸念で萎縮していては、人的交流に裏付けられる二国間の友好関係増進もさることながら、日本自身にとっての将来の利益と発展の機会を喪失しかねないとの心配があるからです。周知のとおり当国には現代産業に不可欠な銅、コバルト等を始め、戦略的に重要な鉱物のほぼ全てが多量に賦存し、豊富な降水と可耕地、森林といった天然資源に恵まれています。また、若者世代を中心として現在約1億人(メガロポリス・キンシャサだけでも1,700万人と言われます)の人口は、2050年には2億数千万、2100年には4億数千万となり、インド、中国、ナイジェリアに次ぐ世界第四の人口大国、すなわち潜在的巨大市場となる見通しです。現状ではインフラ整備が全く追いついていないといった課題はありますが、我が国の質の高いインフラと技術は、大河コンゴ川の中下流両岸を繋ぐ唯一のマタディ橋、キンシャサ市内のポワ・ルーと呼ばれるバイパス道路あるいは街を走る車の9割以上が日本車であること等により、一般市民を含む多くの人によく知られ、高い期待を寄せられています。この点、上述のムココ副首相からも、かつて日本はコンゴでの官民ジョイントベンチャーのパイオニアであり、今も日本製品は街中に溢れているが、日本企業については勇気のあるスタートアップ以外の姿がまだ見えない、官民とも今こそ始動し、支援(贈与)関係に留まらない経済及びビジネス間の協力を加速させるべき時だとのメッセージを頂いています。
もちろん、正しく恐れ、基本的な注意を払うことは必要です。例えばキンシャサ市内であれば、車体を黄色に塗装した一般の乗合バスやタクシーは利用せず、信頼のおけるハイヤーや配車サービスを使い、徒歩での移動は避けること、マラリア対策として必ずしも予防薬の内服までは必要ではありませんが、特に朝夕は蚊除けのスプレー等を用いつつ肌の露出を減らすこと等です。ビジネス環境の改善についてはコンゴ(民)政府も高いプライオリティを置き鋭意取り組んでいますが、個別の問題はまだまだ存在します。何か疑問や障害があれば、大使館としてはコンゴ(民)政府とも連携しつつ、必要な情報提供や側面支援を可能な限り行っていく所存です。
非常に勇気づけられることに、昨年は、様々な個別案件の動向に鑑みて、日本企業及び日本人のコンゴへの関心が高まっており、また、単に「関心を持って注視する」に留まらず、実際に行動に移す動きが出てきている等、潮目が確実に変わってきているように感じています。私自身及び大使館としては、このような流れに棹を差し、ダイナミックな大市場と天然資源に恵まれたコンゴと日本との交流・協力関係を発展させ、双方にとって大きな利益をもたらすものとすることが、最大の責務の一つと考えております。どうぞ、何事も気軽にご相談頂ければ幸いです。
大使館業務への平素のご理解とご協力に感謝申し上げ、本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
最後に改めて皆様のご健康とご多幸、日本とコンゴ民主共和国の平和と友好・協力関係の発展を祈念して、新年のご挨拶とさせて頂きます。
駐コンゴ民主共和国大使 小川秀俊